伊予現代町家の設計

「先ず土地を見よ。土地がすべてを教えてくれる。」
アメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトの言葉です。
現代町家の設計にはルールがありますが、一つとして同じ家はありません。
土地を読み、ベースとゲヤを組み合わせてプランをつくります。
簡単なようでいて、奥の深いのが伊予現代町家の設計です。

サイトプランニング

サイトプランニングとは、建物は土地の形状にしたがう、ということです。ポーチの設け方を例にして見てみましょう。

ここに三つのポーチがあります。引っ込むポーチ・出っ張るポーチ・カーポートから入るポーチの三つです。
道路からのアプローチが取れない場合は〈引っ込むポーチ〉を用います。アプローチは、少しでも長い方がいいからです。広さは最低0.9メートル四方確保したいところで、傘をたたんだり差したりするには、奥行1.5メートル、幅2.0メートルは欲しいところです。

引っ込むポーチ
引っ込むポーチ

〈出っ張るポーチ〉は、アプローチに余裕がある土地の場合に用います。モデルハウスは、アプローチに余裕がないのに、このポーチが用いられています。このプランでは、ポーチ脇に壁を設けることで、小庭に目が向くようにできており、この庭を含めて「家の迎」になっています。

引っ出っ張るむポーチ
出っ張るポーチ

〈カーポートから入るポーチ〉は、都市部によくあるタイプです。家の壁にも車にも接触しない広さは確保したいところです。

カーポートから入るポーチ
カーポートから入るポーチ

このように、敷地(サイト)によってポーチは、様々な形と機能を持ちます。このことはポーチだけでなく、住まいのあらゆる場について言えることです。敷地の形状、道路との高低差、隣家の屋根や窓の位置、樹木の具合なども調べ、それをプランに反映させます。

イラスト:木下俊司

積み木を用いてパタンを検討

サイトプランニングが理解できたら、ベースとゲヤを配置してみましょう。
現代町家では、各種のパーツの積み木をパタンの検討に使います。

積み木

同じ6mのベースでも平屋のものと二階屋のものがあります。積み木は「場」の大きさを表すと共に、建物を立体として見ることが出来ます。片流れの屋根もあれば、切妻屋根もあります。それをベースの積み木に載せると家のカタチが姿を見せます。

ゲヤは、いろいろな大きさとタイプがあります。それをベースの横に置くと、凸凹が生じます。そこをデッキにしたい場合には、デッキの積み木が用意されています。しかし、用意されている積み木だけでなく、段ボールや発砲スチールなどを利用して自前のものを作っても結構です。
狭い土地の場合は、三種類以外の4m×6mのベースがいい場合もあります。
積み木を駆使して、いろいろなパタンを試してください。

  • 敷地図

    敷地図
  • 6mのベースを置きました。

    6mのベースを置きました。
  • 5mのベースを置きました。

    5mのベースを置きました。
  • 6mと5mのベースをつなぐゲヤを置きました。

    6mと5mのベースをつなぐゲヤを置きました。
  • 玄関と階段、洗面、お風呂などのゲヤを置きました。

    玄関と階段、洗面、お風呂などのゲヤを置きました。
  • 片流れの屋根を置きました。

    片流れの屋根を置きました。

ベースとゲヤ

現代町家では、建物を敷地(サイト)にうまく溶け込ませるために建物の単位を小割りにしています。それがベースとゲヤです。


現代町家パタン1
タイプ1
一つのベース + いくつかのゲヤを配するタイプ。
現代町家の基本となるタイプです。コンパクトで高性能な家で、床面積25〜30坪の家に向いています。ペースに対して、ゲヤで凹凸をつけ、敷地(サイト)全体を設計します。

現代町家パタン2
タイプ2
二つのベース + いくつかのゲヤを配するタイプ。
二つのベースといくつかのゲヤを配するタイプ。“府内町家”がこれにあたります。生活ゾーンを二つに分けることで、多様な住み変えができます。家族や生活の変化に対応が容易なタイプです。床面積35〜45坪の家に向いています。
現代町家パタン3
タイプ3 
いくつかのベース複合タイプ。
4〜6mまでの大小のベースの選択により、住宅の大小にかかわらず適用可能なタイプです。細長い敷地に向きます。また、平屋の住まいに有効なタイプです。


パタンの選択

これらのパタンを活かせばプランはおもしろいほどに多彩な展開をみせます。

凸る

凸る

ベースを基体にして、ゲヤで凸(でこ)をつくります。
タイプ1に対応します。凸らせると、そこに凹みや、囲み角地と呼ぶ空地が生じます。

 
対置する

対置する

二つのベースを対置してゲヤで繋ぎます。
タイプ2に対応します。このパタンにゲヤを凸らせると、バリエーションが大きく広がります。対置するベースは、「昼」と「夜」というように、異なる生活パタンに分けられ、奥行きのあるプランが可能になります。二世帯住宅にも適用できます。

●対置させるベースの単位の大きさにより、まったく異なるプランになります。平屋と二階屋を対置させると、さらにバリエーションが増えます。
 

ずらす

ずらす

二つのベースを「ずらす」と、表と裏に、それぞれ性格の異なる庭が生れます。生活ゾーンを分けながら、ゾーンとゾーンを繋げると、オープンネスな空間が広がります。また、「ずらす」ことによって生れた「空地」を、半戸外的な空間として用います。

●「ずらす」ことによって生じる、表と裏の「空地」をプラン段階でどうするかを決めておくべきで、それによってプラン自体の質が違ってきます。

並べる

並べる

複数のベースを「並べ」て繋ぎ、ゲヤを補足します。このパタンは、生活ゾーンを分離しない一体型プランに合います。
「並べる」パタンは単調さを免れませんが、吹き抜けを設けたり、平屋・二階屋を組み合わせたりすると、思っても見ないプランになります。さらにゲヤを配することで、プランはより多彩になります。

振る

振る

ベースとベース、またはベースとゲヤを相対させ、一方を振ります。非日常的な用途によくて、離れ・アトリエ・教室・車庫など住まいと別の機能を求める場合に有効なパタン。二世帯住宅にも合っています。「振る」ことにより、多角形の空地が生れます。デッキや庭の設け方を工夫すると、グンとおもしろさを増します。

●「振る」パタンの難点は、構造的に一体計算できないことです。構造上の検討を行って用いてください。

ケーススタディ

紹介したパタンを組み合わせたケーススタディをご紹介します。
詳細は下の図をクリック!

ケーススタディ 1ケーススタディ 2ケーススタディ 3


ケーススタディ 4ケーススタディ 5

現代町家の設計はルール化されています

現代町家設計マニュアル「設計編」

現代町家の設計は、建築家・趙海光氏と「町の工務店ネット」がすすめる「現代町家クラブ」によってルール化され、マニュアルをもとにした勉強会が開催されています。各地の現代町家は、それぞれの地域に根付いた町家の因子を取り入れながら、日々進歩を続けています。